あなたの家の鍵は大丈夫?プロが教える防犯性能の高い鍵とは?
「鍵」を狙った手口で有名なのが「ピッキング」。
一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
特殊な工具を鍵穴に差し込んで鍵を壊すことなく開錠する手口です。
平成12年には29,211件もの認知被害件数記録しましたが、
平成27年には53件と大幅な減少。
【ピッキング用具を使用した侵入窃盗の認知状況の推移 出典:警察庁 犯罪統計】
もう一昔前の手口で安心と思いきや、最近では「バンピング」や「メルティング」といった
聞き慣れない手口で鍵が狙われるようになりました。
そこで、あなたの家の鍵は大丈夫?
防犯設備士が、危険な鍵の見分け方や、最新手口、そして対策方法をお教えします。
「ピッキング」だけではない!玄関錠を狙った手口とは?
手口その① ピッキング
【特殊な工具を鍵穴に差し込んで開錠する】
2003年9月に施工された法律によって特殊工具の携帯が禁止されたことや、
各鍵メーカーがピッキングに強い鍵を開発したこともあって、
最近ではほとんど見られなくなった手口ですが、
ピッキング未対応の鍵だと5分から10分ほどで解錠されてしまいます。
(実際の泥棒の証言では、3秒から10秒だそうです。)
現在、このような鍵は販売停止になっているので、
新たに危険な鍵が出回ることはなくなりましたが、
といっても危険な鍵が無くなったわけではありません。
これらの鍵はかつて、一般住宅、集合住宅を問わず広く普及していたため、
未だに住宅用の鍵として使用されているのが現状です。
後ほど危険な鍵を紹介しますので、ご自分の家の鍵に使われていたら、
今すぐに交換をおすすめします。
手口その② バンピング
【バンプキーという特殊な鍵山を持つキーと、ハンマーを使って開錠する】
ピッキング対策が取られて一安心と思いきや、
今度はまた新たな手口で簡単に鍵が開けれる事に。
それが2006年ごろから日本でも発生し始めた「バンピング」という手口です。
バンプキーという特殊なキーとハンマーを使って開錠します。
この手口にかかると、ピッキングには10分以上耐えられる鍵でも
数秒で被害に遭ってしまいます。
しかも、ピッキングに比べて熟練した技術も道具も不要なので、
鍵業界を揺るがす大問題になりました。
手口その③ メルティング
【シリンダー内部の金属を腐食させて開錠する】
バンピング対応の鍵を各メーカーが発売すると、
今度はまた違う手口を考えるのが泥棒。
今度は科学的な手法で解錠してきました。
それが「メルティング」です。「溶解破錠」とも言います。
手口は、紙おむつなどに用いられる給水施ポリマーをシリンダーに詰め込み、
そこに王水(濃塩酸と濃硝酸とを3:1の体積比で混合した橙赤色の液体)
などの強酸性の液体をしみこませて、シリンダー内部の金属を
腐食させてしまう手口です。
ディスクシリンダー錠が被害の対象になっています。
この方法は、音も発生せず手法も簡単ですが、
実際には15分以上かかり、かなり異臭がする事、
劇薬で簡単には手に入らない事などから非常に少ない手口ではあります。
手口その④ サムターン回し
【ドアスコープの穴、ドリルで開けた穴などから工具を差し込みサムターンを回す】
「サムターン」とは、つまみのこと。
通常、外から鍵をかける時にはキーを使いますが、
室内からはつまみを回してロックします。
サムターン回しという手口は、ドアにあるあらゆる穴から
特殊な工具を差し込んでこのつまみを回してしまう手口です。
新聞受け、ドアスコープ、ドアの隙間など。
時にはドリルで穴が開けられることも。
手口その⑤ カム送り(バイパス解錠)
【鍵穴を覆うカバーの隙間から特殊な工具を差し込み、カムと呼ばれる部品を回転させて解錠する】
鍵穴を覆うカバーの隙間から、特殊な工具を差し込み、
カムと呼ばれる部品を回転させて解錠する手口です。
バイパス解錠と呼ばれる手口と同じです。
平成14年9月13日(金)に、警察庁が「カム送り解錠」を発表し、
全国でトータル9000万台出回っているという4メーカー15機種の
錠前についても実名が公表されました。
この方法で解錠できる機種がほぼ確認されているので、
現在入手できるものは対策済みになっており安心です。
しかし、旧在庫品であったり、
平成14年当時から何も対策がなされていないなら注意が必要です。
手口その⑥ 鍵穴破錠
【鍵自体を破壊する手荒い犯行。特にバールによるこじ破り被害が急増している】
様々な工具を使って、鍵自体を破壊する手口です。
バールによるこじ開け、電動ドリルやドライバー、ペンチなどを使用しますが、
ドリルによる破壊は時間がかかり大きな音も出るため、
1ドア2ロック以上にしておくことで対策が可能になります。
近年増えているのがバールによるこじ開け。
愛知県警が公表した「黒ずくめ」の窃盗団が主に用いる手口です。
あなたの家の鍵は大丈夫?防犯性能の低い危険な鍵を見分けるには。
平成12年にピッキングが大流行してから、泥棒と鍵メーカーの知恵比べが続き、
対策品を出せば、泥棒は欠点を見つけ、その対策品を考えると、
また新たな手口が生まれるというイタチごっごが鍵の現代史となってきました。
今では、交換用や新築物件で用いられる鍵は安全性の高い鍵になっていますが、
その一方で未だに危険な鍵が使用されているのも事実です。
これから紹介する3タイプは、
一時期広く普及し、未だに使用されている危険な鍵です。
もしあなたの家の鍵がこの様なタイプなら、今すぐ交換をおすすめします。
危険レベル ★★★★★ |
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美和ロック ディスクシリンダー錠。MIWAまたはH248の刻印が目印です。極めて危険な鍵の一つです。 |
GOAL ピンシリンダー錠。ピッキング、バンピングにも弱い。ユーシンショウワからも同じタイプが発売されています。 |
美和ロック 初期型U9 ディスクシリンダー錠。シリンダーに弱点がありピッキングなら10分以内で解錠可能な鍵です。 |
防犯性能の高い鍵とは?
現在、メーカーから発売されているものは、
比較的防犯性能の高い鍵がスタンダードになっています。
基準となるのはやはり、「ピッキング、バンピング、鍵穴破錠などの
様々な手口に対抗できる工夫がなされているかどうか」です。
その中でも平均的なセキュリティーレベルのものから、
とことんこだわりぬいた世界最高峰の鍵まで、その代表的な鍵をご紹介します。
平均以上の安心レベル ★★★☆☆ |
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美和ロック U9 (2001年後期以降) 初期型U9の弱点を改良したモデルでピッキングにも10分以上耐えられるようになりました。年々進化しているものの、メルティングは未対応。 |
美和ロック PR シリンダー内部に複数の高硬度部品を使用しているのでドリル破壊に強くなっています。性能強度によって3レベルあるが、最強レベルのG3は、もぎ取り破壊にも耐えるCP認定品です。メルティングには未対応。 |
GOAL V-18 ピンシリンダー方式で高精度の18本ピンから生まれる120億通りの鍵違いが特徴です。また焼入鋼製のピンとドリル破壊防止板の2重ガードの頑強設計にもなっています。 |
世界最高峰安心レベル ★★★★★ |
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カバスターネオ 防犯立国スイスの老舗メーカから誕生した最上級のピン系シリンダー。鍵違い数は2兆2千億通りと、ピッキングは不可能と言われています。メルティング対策も他者メーカーよりも先んじて発表されました。 |
クラビス22F 特徴となっているのは、その小さな丸い鍵穴。工具を入れたり、テンションをかけにくい構造になっています。また、シリンダー内部にはプロテクターが埋め込まれているのでドリル破壊にも強い構造です。 |
ロイヤル★ガーディアンEX バンピングで開けようとすると、途中で「デッドロック」がかかり、抜くことも回すこともできなくなり、 バンピングを試みたという形跡が残るシリンダーです。また鍵の紛失やトラブルが発生してもサポート体制が充実しているのも特徴です。 |
「電子錠」がおすすめアイテムなのはなぜ?
電子錠の最大の強みは、「オートロック機能」といっても過言ではありません。
なんと言っても空き巣侵入手口の堂々第1位が、
「無締り」「無施錠」での侵入だからです。
平成27年には、全国で50,960件の住宅を狙った侵入盗事件が発生していますが、
そのうちのなんと40%つまり23,304件が「無施錠」による被害です。
一方で、「ドア錠破り」「施錠開け」は合計で3~4%。
これまで、防犯性能の高いこじ開けられない鍵の話をしながら
「身も蓋も無い」話ですが、実は、「こじ開けられない鍵」よりも
「かけ忘れのない鍵」の方が10倍も効果的なんです。
5分程度のゴミ出しなら「すぐに帰って来るから」と鍵をかけずに
外出してしまうことってありませんか?
そんなちょっとした隙を狙われたお宅が23,304件もあったと
考えるとぞっとします。
「電子錠」はそんな不安を解消できるので、
鍵の交換を考えておられる方には超おすすめの防犯グッズです。
「EPIC TRIPLE X」
厳しい品質検査により、格段に低い故障率を誇る電子錠。「EPIC TRIPLE X(エピック トリプルエックス)」。
鍵穴がないので、ピッキングやバンピングでの不正開錠による侵入を防ぎます。
ドアを閉めると自動的に施錠され、鍵の閉め忘れの心配はありません。
解錠方法は、「暗証番号」「ICカード」「非常キー」の3つの方法による解錠が可能。
適当な数字を入力後、続けて暗証番号を入力して解錠することで、暗証番号をごまかすことのできる「ダミー暗証番号」機能や、
1回限りの解錠に使用する暗証番号を設定できる「ワンタイム暗証番号」機能などを搭載。
鍵の寿命は?
どんな製品にも寿命があります。
生命・財産を守るという大事な使命があるセキュリティ機器も、
当然ながら取り付けたら永久に壊れない、メンテナンス(手入れ)不要、
機器(部品)交換不要というものはありません。
日本ロック工業会が出している目安は、
一般錠の対応年数は10年、電子錠は7年とされています。
これはあくまでも目安であって、高性能な鍵であればあるほど、
寿命が短いと言えます。
高性能シリンダーは皆さんの予想以上に精密です。
シリンダー内部には「タンブラー」と呼ばれる小さなピンや板が入っています。
これらは、コンマ何ミリという隙間でピストンの要領で動いており、
それを助けるバネも、0.2mm程度の非常に細いものです。
そこに塵や埃、水分、油分などが侵入すると、動きを阻止してしまい、
鍵が回らない状態になってしまうのです。
【鍵の構造】
ですから、一年に一回はメンテナンスをしないと5年で壊れてしまいます。
線路や海沿い、また大きな道路沿いの場合は、特にメンテナンスが必要です。
逆に性能低い鍵は、シリンダー内がスカスカですから、
多少の塵や埃でも何の影響もなく使えてしまうわけです。
賃貸物件の場合は交換しても良いのか?
賃貸のアパートやマンションなどに住んでいる場合、
鍵の交換や2ロックへの増設などを行いたい場合、
勝手にやっても良いのかと質問を受けることがあります。
結論から言うと、賃貸物件の鍵交換については、
入居者が勝手に行うことはできません。
必ずオーナーや管理会社の了承が必要になります。
また、退去時には原状回復も求められます。
防犯性能を高めることになるのだから良いのではと考えがちですが、
後でトラブルになる可能性もあるので注意が必要です。