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犯罪減少なのに「治安は悪くなった」と感じる人は増加。その理由とは?

「5年前、10年前と比べて治安は良くなったと思いますか?」

「逆にこれから5年後、10年後、もっと治安は良くなると思いますか?」

こう質問されたら、あなただったら何と答えますか?

 

「昔より治安が悪くなったように感じる」

「これからも良くなることはないのじゃないかしら」

こんな回答でしょうか。それともその逆でしょうか。

 

この人々が感覚的・主観的に感じている治安の情勢のことを「体感治安」と言います。

では、多くの人はどう感じているのでしょうか?

 

世界でもまれにみる安全な国?

度々発生する事件を見聞きすると「日本も治安が悪くなった」と感じるものですが、

世界的に見ると治安の良い国として評判が高いのが日本です。

日本の治安の良さは様々な所で評価されています。

 

例えば、2020年のオリンピックに東京が選ばれた時、

多くの海外メディアは「不確実性の時代の治安の良さ」が決め手となったと報じました。

 

1960年代から80年代にかけて米英独他主要先進国では、

犯罪発生率が2倍から3倍近く増加したのに対し、

日本では1割強の増加にとどまりました。

 

社会学的な通説では、都市の工業化が進み、

人口密度が高くなると犯罪発生率も高くなると言われてきたのですが、

日本の場合はそうではなかったというのが世界的に評価されていたのです。

 

その様子は災害発生時にも見られました。

2005年にハリケーン・カトリーナがアメリカ・ニューオーリンズを襲った時には、

警察官までもが略奪に加担し無法地帯と化しました。

 

一方、東日本大震災の際には、気仙沼信用金庫の壊れた金庫から4,000万円が

持ち去られた事件以外には窃盗事件は非常に少なく、配給食糧の奪い合いもなく、

震災の中でも秩序が保たれていたことは世界中の賞賛の的となりました。

 

もちろん、災害に乗じた火事場泥棒も多数報告されています。

それでも、被災者支援や被災地復興に向けた取り組みは多くの国の手本と言われています。

 

では、実際の犯罪発生件数はどうでしょうか?

刑法犯の認知件数(警察が被害届などを受けて犯罪の発生を把握した件数)は,

平成14年に戦後最多の約285万4000件を記録しましたが、その後は13年連続で減少し,

平成27年は約109万9000件となっています。

平成14年を境にして年々減少していることが分かります。

 

それでも、年間で100万件以上の犯罪が起きているわけですが、

凶悪犯罪と呼ばれる殺人・強盗・放火・強姦は5,618件でした。

その中でも殺人事件の発生件数と発生率に注目してみましょう。

 

銃による死亡者数が毎年1万人を超えると言われているアメリカと比べると、

発生件数も発生率も圧倒的に日本の方が安全であることが分かります。

 

海外からの旅行客に日本の治安について尋ねたところ、

「日本の治安は優れている」と答えた回答者が20人中18人だったという結果があります。

多くの回答者に共通しているのが「夜一人で歩いても大丈夫」というコメントでした。

 

もちろん、一人で歩くと危険な場所もありますし、

「水と安全はタダ」という時代でもなくなりました。

それでも諸外国と比べると、平和で安全な国に住んでいるということになります。

 

犯罪は少ないのに治安の悪化を感じる日本人

海外と比べるとはるかに安全。実際に犯罪件数も減っている。

なのに・・・平成24年に内閣府が3,000人を対象に行った「治安に関する世論調査」では、

「日本は安全・安心な国と思う」との回答が全体の59.7%を占めていたのに対して、

過去10年間で日本の治安が「悪くなった」と回答する人はなんと81.1%に上りました。

犯罪は減少しているのに治安の悪化を感じているのが日本人の特徴のようです。

 

では、なぜ治安が悪化したように感じるのでしょうか。

それにはいくつかの要因があるようです。

 

情報のスピード化

インターネットの普及によって情報化が進み、

凶悪な犯罪が起きるとリアルタイムで情報を入手できるようになりました。

 

昔は、新聞かテレビのニュース番組でしか知ることができなかった出来事が、

手元の端末で瞬時に知ることができる。

 

加えてSNSなどのサービスで情報の発信・意見の交換が、

個人レベルで出来るようになりました。

 

結果、犯罪が発生すると発生現場からのリアルな情報によって

現場にいるような臨場感を味わえたり、

事件や犯人に対して個人的な論評が公開できたりと、

より犯罪が身近に感じるようになりました。

 

これまでだとどこか遠くで起きていた犯罪が、

あたかも自分の身の回りで発生したかのような感覚になり、

それが「治安が悪化した」と感じる人を増やす要因になったのでしょう。

 

マスコミの報道姿勢

別の要因はマスコミの報道姿勢です。

 

体感治安の悪化の理由に関して、

「マスメディアで犯罪の報道をよく見るから」と回答した人が50.0%と

半数を占めていることからもマスコミの影響が大きい事が分かります。

 

「ゲーム中に『ご飯だよ』に激高 息子が父親刺し死亡」

「福岡の母子3人死亡、夫の警察官を妻殺害容疑で逮捕」

「千葉・松戸『リンちゃん殺害』PTA会長逮捕!すぐ近所に住む40代男」

これらは2017年4月から9月中に実際に発生した凶悪な事件です。

 

こうした事件が発生するたびに「物騒な世の中になった」と感じるのは当然ですが、

マスコミがこうした事件を何度も何度も取り上げるので、

余計に視聴者が危機感を感じてしまうのも事実です。

 

少年犯罪の低年齢化・凶悪化を挙げる人もいますが、

実際のデータで見るとどちらも減少傾向にあります。

 

それで、体感治安はコントロールされていると分析する専門家もいます。

 

新たな手口の犯罪の増加

「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」といった特殊詐欺の増加も、

体感治安を悪化させる要因と言われています。

 

また、インターネット上に流出したIDやパスワードの不正利用による被害も後を絶たず、

ITを利用した犯罪には警察も対応しきれていない事実があります。

 

身体的に危害を加えられる犯罪ではありませんが、

こうした新しい手口の犯罪が発生すると「治安が悪化した」と感じる人も増えています。

 

体感治安は警察への信頼度と比例!

2016年8月30日付の毎日新聞に興味深い記事が掲載されました。

大阪最下位 警察庁が初調査、警察信頼度に比例

都道府県ごとに住民の「体感治安」を探る全国調査を警察庁が初めて実施した。体感治安が最も悪かったのは大阪で、最も良いのは山形だった。警察への信頼度が高い都道府県ほど、体感治安も良い傾向がみられた。調査では「地域の治安をどの程度だと感じるか」を尋ね、5点満点で回答を求めた。全国平均は3.66。都道府県別の平均値をみると、ベスト3は4.00点を超えた山形、島根、秋田。ワースト3は3.50を割り込んだ大阪、千葉、愛知だった。「地域の警察を信頼できると感じるか」も質問したところ、全国平均は3.45。ベスト3は福島、山梨、山形。ワースト3は神奈川、大阪、千葉だった。❞

 

この調査によれば、体感治安と警察信頼度がある程度比例していることが分かります。

そしてこのデータをよく見ていると何かのデータとも酷似しているように見えます。

 

それは、平成28年の住宅を対象にした侵入盗被害都道府県別ランキングです。

ワースト上位8位までを挙げると、

1位 愛知県 4,154件

2位 千葉県 3,252件

3位 東京都 2,750件

4位 福岡県 2,653件

5位 埼玉県 2,548件

6位 大阪府 2,341件

7位 神奈川県 2,204件

8位 茨木県 2,102件

 

年間認知件数が2,000件を超える件を挙げましたが、東京都と茨木県を除いて

どちらも体感治安及び警察信頼度のワースト8位内に入っていることが分かります。

 

ここから推測できるのは、空き巣などの侵入盗被害の多さが体感治安を下げ、

同時に警察への信頼度の低くさせているのではないかということです。

 

「犯人は捕まるのだろうか。」

「盗まれた物は戻ってこないだろうし。」

「警察はどれぐらい本気で犯人を捜すのだろうか。」

「また被害を経験するのでは。」

 

空き巣被害を経験するとこうした不安や不満が生まれ、マイナス感情が地域に広がると、

「この辺りは治安が悪くなった」「地元警察は何をやっているんだ」といった

負の連鎖が始まるのかもしれません。

 

市民は何に不安を感じているのか?

内閣府が行った「不安を感じる犯罪」は何かという調査に対し、

全体の51.1%が「空き巣などの住宅などに侵入して物を盗む犯罪」と回答。

 

次いで多かった回答は「すり、ひったくりなどの携行品を盗む犯罪」と、

半数近くの人が空き巣やひったくりといった直接自分や家族に害が及ぶ

窃盗罪に不安を感じているようです。

 

別の調査では、男性と女性では不安を感じるポイントが違うことも報告されています。

男性の場合、自分自身よりも自分が家にいない時に家族にもしものことが起きたらと、

守ってあげられないという気持ちが体感治安に影響を与えるようです。

一方、女性の場合は腕力に自信がないので「自分が襲われても身を守る術がない」と、

不安になるようです。

 

他方で犯罪統計によると、窃盗罪で空き巣やすり、ひったくりよりはるかに多いのは、

「万引き」「車上狙い」「置き引き」といった「非侵入盗」と多くの人が不安に感じる

手口とは別の窃盗罪となっています。

 

この結果からも「犯罪統計」と「体感治安」の結果にずれが生じていることが分かります。

こうした背景には、マスコミや警察の防犯活動、近隣で発生した犯罪についての

地域住民の噂話などがあると考えられます。

 

体感治安が悪いのは本当に悪いことなのか?

ここまで見ると「体感治安」がどこか曖昧な調査結果であると感じるかもしれません。

実際に治安悪化というイメージ自体に根拠がないという指摘もあるほどです。

 

首都大学東京都市教育学部長・前田雅英氏は、

「体感治安という言葉は学問的な概念ではなく、

事件をマスコミがどのように報道するかという面が大きい」と指摘します。

 

また、龍谷大学法科大学院の浜井浩一教授が2006年に行った調査では、

「2年前と比較して周辺地域と日本全体で犯罪が増えていると思うか」と聞いたところ、

「とても増えた」と回答した人のうち、自分の住んでいる地域では3.8%だったのに対し、

日本全体では49.8%でした。

 

つまり、多くの人が「自分の周りでは治安はそれほど悪化してはいないが、

日本のどこかでは治安が悪化いる」と感じていることをあらわしています。

 

では、「体感治安が悪い」という状態が本当に悪い事なのでしょうか?

そうとも言い切れません。

 

治安悪化の不安は、犯罪抑止の為に自宅の防犯対策を強化することにつながり、

地域住民の防犯意識を高め、地域の連帯感を生み出す効果があります。

 

女性や子供たちの安全の為に暗い夜道に街路灯や防犯カメラを設置したことが、

犯罪の減少に役立った例は数多く報告されています。

一部の住民からはプライバシーの侵害で反対意見が上がる場合もありますが、

それでも体感治安の悪化からくる不安の声が防犯設備の充実に一役買うのも事実です。

 

体感治安の悪化は防犯意識を強め、効果的な防犯対策とは何かを

人々に考えさせる大きなきっかけとなっているのです。

 

まとめ

犯罪がなくなればそれに越したことはないのですが、

現実には犯罪が全くなくなることはありません。

その現実を踏まえた上である程度の危機意識を持つことは大切です。

 

もしかすると、これからも凶悪な犯罪が増えるかもしれません。

不安なニュースもたくさん報道されることもあるでしょう。

浜井教授は「犯罪は正しく恐れ、その上で、効果的で副作用の少ない、

人々の生活に優しい防犯対策を考えるべきであろう」と述べています。

 

報道すべてを鵜呑みにせず、正しい情報の元に、

正しくて効果的な防犯対策をすることが大切ですね。

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